高断熱住宅の施工勉強会に参加しました。

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岩手県紫波町へ行ってきました。高断熱高気密の高性能住宅を作るため、定期的な勉強会や様々な取り組みをしているDotプロジェクトさん主催の施工勉強会に参加するためです。

 

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岩手県紫波町は、その先進的な街づくりの取り組みから、大きな注目を集めている町です。

民間主導の街づくりを基軸に、町の魅力を作り出すことで賑わいを創出し、「オガールプロジェクト(紫波中央駅前都市整備事業)」として2013年度の土地活用モデル大賞国土交通大臣賞を受賞しました。そのオガールプロジェクトの一環として、紫波町では「高性能住宅(エコハウス)」を建てることを条件に土地を分譲しているエリアがあります。

 

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大きな複合施設の周りに計画された、美しい街並みを作るエコハウスは、「これからの東北の暮らし」のモデル事業となっています。

住宅性能についての基準は大変厳しく、(1)年間暖房負荷48kWh/m2以下、(2)相当すき間面積(C値)0.8cm2/m2以下、(3)構造材における町産木材の利用率80%以上 – が宅地分譲の条件として設定されています。

 

年間暖房負荷は、50kWh/m2以下が国際的な一つの目安基準になっているのですが、紫波町は町名にかけて48(しわ)kWh/m2以下にしたとのこと。真面目な取り組みなのですがユーモラスです。

 

また、Q値(断熱性能)ではなく年間暖房負荷を基準にした理由は、断熱性能を持ちながらも南向きに大ききな開口を取らなくては達成できない数値だからだそうです。

Q値を上げようとすると窓をどんどん小さくしていってしまいがちだが、窓の小さな家が連なっていても、住んでみたいと思える街並みにはならない。日射取得で暖房負荷を減らすことができれば開放的な家になる。サッシの性能が上がってきたので、開口部を大きく取っても熱は逃げていかない。」と、建築家の竹内昌義さんが考え、「デザインと性能」が両立した住宅を重視していることが伺えます。(参考:日経アーキテクチュア

 

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そんな紫波町の町の大型施設「オガールプラザ」内にて、全国の設計者・施工者向けに勉強会が開かれたのでした。

専門家向けのイベントであるにも関わらず、会場に入りきらないほどの来場者。

皆さん遠方からいらっしゃってるので、かなり本気の雰囲気です。

 

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サッシ周りの気密性を上げるための、施工後に膨らむ不思議なテープの施工方法を教えていただきました。住宅性能先進国のドイツでは、かなり普及が進んでいるそうです。

 

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サッシの周りに気密テープを張り、施工していきます。大工さんによる本気の施工パフォーマンスでした。

サッシはものすごく断熱性能の良いトリプルサッシ。分厚いガラス3枚と、それを支える丈夫な枠は、大変な重量になります。

今回の施工パフォーマンス用の小さなサッシでも、かなりの重量でした。あれだけのサッシを使えば、家の熱も逃げにくい構造になるなと身を持って感じることができました。

 

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外壁の施工方法も実演しながら教えていただきます。

外壁にとって重要な防水と通気(雨などの外部の湿度を室内に侵入させないことと、室内の湿気は外に排気すること。)をどのように効率的に達成するか。わかりやすく説明していただきます。

 

防水と通気という二つの矛盾することを両立するために生まれた「タイベックシート」。このシートで家を覆うことで、家の中は湿気らず、結露の発生を防ぎ、カビを抑制することができます。

しかし、どんなに高性能のシートを使ったとしても、施工方法に不備があれば本来の性能は発揮できません。水や空気という大変小さなものをコントロールするためには、繊細な施工が必要となります。通気空間をどのように確保するのかなど、経験による知見を惜しみなく教えてくださいました。

 

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湿気を吸いやすいと言われることの多い断熱材、グラスウール。でも本来は、「断熱材にまで湿気が到達してしまうこと」が問題で、断熱材自体は悪くありません。

グラスウールは断熱性能がとても高く、正しい施工をすれば大きなパフォーマンスを期待できます。

「湿気に強い断熱材」を使用したとしても、湿度の多い環境に放置すればカビや劣化は免れません。反対に、「湿気を吸いやすい断熱材」を使用できるような、湿気をきちんとコントロールした施工をした家の方が、安心ではないでしょうか。

 

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また、最近注目されている、ウッドファイバーの断熱材の模型も展示されていました。木質由来の断熱材なので、環境負荷を考えるととても魅力的な素材です。今後より普及していくことが期待されています。

 

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後半は座学として、様々な住宅にまつわることをデータで勉強しました。

「高性能の住宅は興味あるけれど、価格が心配」という声は、仕事をしていてたくさん耳にします。

ですが、高断熱高気密の住宅は、旧来の住宅に比べて光熱費を大幅に節約できます

エネルギーを使わない住宅は、環境負荷が低く地球に優しいだけでなく、お財布にも優しい、ということがデータを読み解くと理解することができます。

性能の良い住宅部材が普及し価格が下がったことで、だいたい10年で元を取れるようになってきました。(設備投資のイニシャルコストと光熱費などのランニングコスト、そして設備機器のメンテナンス費用などの合算から出した数字だそうです。)

 

今後ますます、高性能住宅はコストパフォーマンスが上がっていくので、「エコハウスを建てないと損!」という未来が始まってきています。

 

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さらに、薄々感じていましたが、はっきり言われるとショックな事実。

「東北が世界で一番寒い寒い住宅」(!!!!!!!)

 

気温の低い北海道は、高断熱高気密住宅の先進エリアです。

反対に、関東は東北ほど気温が低くないため性能とのギャップが小さいと言われています。

東北は気温が寒いにも関わらず、住宅性能に重きを置いた家が少ないエリアです。地域と気候から考えるた場合、東北は「我慢して暮らす家」になっているのではないでしょうか。

 

「暖かい家が東北に増えれば、子供や孫が東北で過ごすことを楽しめるようになり、過疎化も止まる」というお話があり、納得してしまいました。冬寒い家には、やっぱり足が遠のいてしまいます。

 

 

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高齢化が進む日本において、光熱費の負担が小さくなることは、老後の安心にもつながります。

 

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東北で高性能で美しい住宅を手掛けている方々がパネラーとなり、これまでの実績や工夫など、「やってみてわかったこと」を共有する貴重な勉強会でした。

 

リアルタイムで技術や性能が上がっていき、無限に組み合わせのある住宅の建材。

科学の実験同様に、理論と実践を積み重ねることでデータが蓄積していきます。そのデータを広く共有していくことで、地域全体のレベルを上げていこうというという意欲的な取り組みに、ラビーダも賛同しています。

 

 

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Dotプロジェクト事務局の長土居さん。10年以上前から、快適な住宅のために性能を重視した住宅設計に取り組んできました。

「プロとして、お客さんのストレスを軽減しなくてはいけない。デザインに納得がいかなくても、性能が悪くても、そしてコストが高すぎてもお客様のストレスになってしまいます。性能ありきではなく、お客様がストレスなく過ごせる環境が大切」という思いは、ラビーダが大切にしていることと共通することだと感じました。

 

積極的に新しい情報や技術を取り入れ、ラビーダも進化していきたいと思います。

どうぞラビーダの今後に益々のご期待を頂ければ幸いに思います。

 

 

長谷川