先日、10年来のお客様よりダイニングチェアの張替のご依頼を頂きました。
Before

今回はHans J. Wegnerによって1953年にデザインされたDining Chair W2(オーク材)の籐張りタイプになります。
W2はウェグナーの隠れた名品として、ラビーダでは多くのヴィンテージ品を扱ってきました。W2の特徴としては、その削り出しによって生まれたその笠木がポイントです。
現在の家具のほとんどの湾曲した木材は薄板を張り合わせ、型にプレスして形成しております。この方法だと材料は薄いもので済みますし、木材のロスが少ないのが特徴です。
しかし、このW2は一つの大きな木の塊から笠木を削り出しており、現代では考えられない贅沢な木材の使い方をしているのです。
購入時に座面の籐が何本か切れていたので、その部分だけ補修しておりました。写真の白い部分が当時張り替えられた部分です。

約十年ほど経ち、他の部分の籐が切れ始めたため、今回座面の籐を全張り替えいたしました。
そして張替が完了したものがこちらになります。
After


木部の経年変化と籐の真新しさがいいコントラストになりました。

籐張りの椅子は軽く涼しいことも特徴です。W2には籐張りの他に座面張りのタイプがあります。こちらと持ち比べるとその軽さに驚かれる方もいます。

W2の籐張りは表面だけではなく、裏面も釘痕がほとんど見えない美しい編み方になっています。

貫の内側にはC.M.Madsens社の刻印。
そしてもう一点注目する点があります。座面の籐の編み方です。
籐の編み方には様々な種類があり、木部のバランスを見ながら1本1本手で編んでいきます。手間はかかりますが、ここで仕上がりの差が出るので丁寧に進めていきます。

[今回張り替えたW2]

[前に張り替えられた別のW2]

その違いが分かりましたでしょうか。
編み方を間違えると左右非対称になってしまったり、全体のバランスが崩れてします。これは籐張りだけではなく、ペーパーコードの張り替えも同様です。張替の一部である、編み方でも多くのやり方やコツが必要です。

同じ椅子でもヴィンテージ品は木部の個体差があり、張り方でも全く別物になります。古いものを見るときにはこういう細かな点や裏などを見てみるのもとても面白いものです。
K様 今回はご依頼いただき誠にありがとうございました。お届けするのを心待ちにしております。
saku
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