美味しいご飯を食べること。それは人間の幸せの基本です。
日本人にとって、特に「お米」に対しては特別の思い入れがあると思います。
そんな「食べること」という基本を大切にし、多くの人に「おむすび」を通じて大切なことを伝えてこられた佐藤初女さんが2月1日、旅立たれました。
ラビーダ一同、心よりご冥福をお祈りいたします。
ラビーダ代表の渡部も、十数年前に佐藤初女さんにお会いしたことが人生の大きな分岐点だったと言います。
お話した時間は少しでも、その慈しみにあふれた人間性に触れることで、抱えていた傲慢さを見直す大きなきっかけとなりました。
代表にとっても、心の支えだった佐藤初女さんが旅立たれたタイミングは、折しも立春間近の季節の変わり目でした。
これからラビーダが目指す方向、考えを、初女さんの言葉を引用することで立春のご挨拶にしたいと思います。
私たちは「森のイスキア」と
命名している小さな建物を
拠点にして、ささやかな活動を
続けております。
「ささやかな活動って
どんなものですか」
とどなたからも聞かれますが、
形にもなっていなければ、
さりとて決まりもない。
ただ1つだけ
はっきり答えられるのは、
「食べることを大事にしている」
ということです。
食べるなんて
日に3度のことなので
当たり前じゃないか、
と思われがちなんですが、
私たち人間は食材の命を
いただいて生きています。
それがなければ生きられません。
だから食はすべての生活の
基本だと考えています。
それで訪ねてきた人に
私が何をしているかといえば、
何にもしていない。
ただ、皆で一緒にご飯を食べて、
その方が「おいしい」と感じた時に、
徐々に心の扉が開くように、
ぼつぼつと話し始めてくれます。
そして話しているうちに、
自分で自分の問題に気づいたり、
進んでいくべき道を発見したり
されるのです。
そうやって
ご自身で納得した上であれば、
行動にも移しやすいのです。
実際に行動に移しますと、
周りから見ていても
「あの人、変わりましたね」
という印象を受けるんですね。
そのように、本当にその人が
「おいしい」と感じて食べた時に、
皆さんはそれぞれの大切なことに
気づいていかれるのです。
おいしいと感じた時に、
体の細胞が躍動して
元気になっていきますので、
食べるということは
ストレートに心にも魂にも
通じていくように思います。
私に対しても皆さんから、
これからの夢や希望は何ですかと、
もうこの年まで生きてますから
心配して聞いてくれます(笑)。
それに対して私は、
「夢も希望もないわけでは
ないけれど、
“いま”を生きることを
大事にしてるんですよ」
と答えているんです。
ですから悩みを抱えて
訪ねてこられた方にも、
「いま私たちは何事もなく、
ここにこうしていられる。
まずこれに感謝するだけで
いいじゃないですか。
感謝してじっとしていれば、
必ず自分の道が示されてきます」
と話しているんです。
でもそこで、
私はこうでああでできないとか、
体調がすぐれない、
しんどいからダメだという人は、
いつまでたってもそこで
止まっているように思います。
そこで素直に、
「はい、そうですね」
と答えられる人が
立ち直りやすい人です。
そういう時に私は、
ただ感謝するだけでなく、
感謝とともに動いてくださいと
言います。
それも、自分のためにでなく、
人様のために動けば、
その人の喜びが自分に返ってきて
元気になりますから、
と話しているのです。
心配事で訪ねてくる人は、
たいてい先のことを
考えるんですね。
一寸先も見えない、
分からないことだらけの先を
頭だけで考えるから、
現実はそうはいかずに
崩れてきてしまう。
私はやっぱり、
いまというこの時が一番大事だし、
一番確実だと思うんですね。
それに尽きると思います。
いまを生きるとは、
一人ひとりとの出会いを大切にして、
小さいと思われることを
大事にすることだと思います。
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「いまを生きる」
佐藤初女
(森のイスキア主宰)
『致知』2007年2月号
特集「一貫」より
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たくさんの人とのつながりによって生かされている毎日に感謝し、小さな幸せに「気づく」ことを、これからの目標としたいと思います。
長谷川
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