少し時間が経ってしまいましたが、3月某日、秋田県へ行ってきました。
「もるくす建築社」さんの、住宅見学会へ参加するためです。
今回のツアーを企画した、チャネルオリジナルの大柳さん。
「日本エコハウス大賞2015」を見事受賞したもるくすさんの、日本トップクラスの性能とデザイン性の高い住宅を実際に見てもらうためにと、住宅専門家たちに声をかけてくださいました。
この日は全国から、20人以上の建築家や工務店の方が集まりました。
このツアーでは、建築途中の物件1軒、お引き渡しを済ませた物件3軒、もるくす建築社代表の佐藤さんの自邸の計5軒を見て回るという、大満足のボリュームです。
まず1軒目は建築途中の現場から見せていただきました。
(画像の方がもるくす建築社代表の佐藤さん)
現場では、ちょうど天井に断熱材を詰めている最中でした。
特厚のグラスウールを見せていただきながら、施工面でのお話を伺います。
柔らかい断熱材を切るために、特別な電動工具もスイスから輸入したそうです。
これにより飛躍的に作業スピードが上がったとの事。
熱橋(熱を伝えやすい部分=熱が逃げやすい部分)になりやすい金物周辺には隙間ができないように注意深く断熱材を詰めていきます。
断熱材は二層になるように収めます。この時にいかに隙間をなくせるか、現場ならではのコツを教えていただきました。
短いですが、動画で見ると断熱材の入れ方がわかりやすいです。
次に伺ったのは、お引き渡しから1年程度住まわれたという住宅。
外壁がだんだんと味が出てきています・
窓の周りの壁の厚みから、高断熱住宅ということがうかがい知れます。
ラビーダでもよく使う、ドレーキップの高性能樹脂サッシ。
見学会でたくさんの人が集まり玄関は靴であふれました。
夏の日差しを遮る遮光のタープ。
高断熱住宅は、夏場のオーバーヒート(熱が逃げにくいため、熱くなりすぎること)を防ぐため、日射遮蔽も合わせて考えなくてはなりません。
ソーラー温水パネルもスッキリと収まるデザインでした。
いかに高断熱高気密の家が快適で心地よいか、それは体感してみれば一発でわかると佐藤さんは言います。
人の体温は一人当たり常時100ワットの熱を発しています。この人数で佐藤さんの設計した家に入ると、人の熱だけで室温が上がっていくことを実感しました。
「性能を上げる方法に、魔法はない」
「断熱材は嘘をつかない」
もるくすの佐藤さんの話はとてもわかりやすいです。
断熱材を入れれば、その分だけ高断熱の家は作れます。
しかし、その分コストは上がります。
佐藤さんは、コストと性能のバランスをうまくとりながら、デザインも妥協しない設計をされています。
自然素材、大開口、高性能。もるくす佐藤さんの設計する住宅は、その3つがうまく調和し、居心地のいい空間を作っていました。
断熱性能の高い家で暮らすことは、身体が冷えないため冬場に外に出ることも苦にならなくなります。
また、室内の温度ムラも限りなくなくなりますので、どこにいても快適な家になります。
最後に訪れた佐藤さんの自邸は、もるくす建築社としても大きなチャレンジをして完成された住宅でした。
世界で最も厳しい性能基準を求められる「パッシブハウス認定」の、取得申請をしている真っ最中。(パッシブハウスジャパンからは、認定取得は確実視されているそうです。)
パッシブハウス認定を取得するためには、家の性能だけでなく「どれだけ環境負荷が低いか」が大切になります。
佐藤さんの自邸も、ソーラーパネルでの電力の自給、太陽光温水システムによる循環システム、薪ストーブによる温水循環システムなど、地球に優しいエコロジーな設備を備えた住宅でした。
外壁には秋田杉。4mを超える長さの杉材の一本ものの外壁は圧巻でした。
リビングダイニングには大谷石をあしらった壁。
自然素材を巧みに使ったデザインの室内は、佐藤さんの美意識があふれた空間となっていました。
設備機器のコントロールパネルは一箇所に集中しています。
キッチンの床は土間。「熱許容量」の高い室内は、住宅の温度変化を緩やかにし、夏場の暑い時期でもキッチンの室温を上げにくい利点があります。
薪によるキッチンコンロ。
佐藤さんの家は、電気とガスはオフグリッド(インフラにつながっていない家)でエネルギー自給を達成しています。
リビングに設置された薪ストーブは、冬場に温水を作り床下循環して熱を効率よく使うものだそうです。
家の外には太陽光パネルが一列に並びます。
冬場の積雪を考え、設置方法を工夫していました。
大きな熱ロススポットである玄関周りは、金属壁によって大胆な風除が作られていました。
住宅の熱橋になりにくい工夫の一つです。
植栽や外構は暖かくなってから工事が始まるそうです。
最後に、もるくす建築社さんのオフィスへも立ち寄らせていただきました。
お客さんとの打ち合わせでも暖かさを実感してもらえるようにと、断熱改修した社屋です。
勉強会のテーマは、「住まいの境界」。
内と外の境界である「住宅の外皮」に、私たちはもっと注目し、哲学を持っていくべき時代が来ています。
もるくす建築社の佐藤さん、そしてツアーを企画されたチャネルオリジナルの大柳さん、スタッフの皆様、この度は本当にお世話になりました。
たくさんの学びと気づきのあった研修となりました。
「快適性の向上」「省エネルギー」「長寿命」「エコロジー」をキーワードに、質の高い住宅の普及を目指し、今後も地域間の交流を深めていければ幸いです。
長谷川
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