会津のとある山へ、漆職人の村上さんの案内で出かけてきました。
漆の木から、漆を採取するところを実際に見せていただくためです。
漆掻きから漆塗りまで。漆に関わる仕事を生業にしている村上修一さんです。
漆掻きをする前に、一通り道具の説明をしてくださいました。掻き取った漆の樹液を入れる漆桶は、長年の仕事が染み込み見事な骨董品に育っていました。
白洲正子さんが雑誌で漆桶を花器として使用した例を紹介したことから、仕事道具である漆桶を欲しがる人はとても多くなったと教えてくれました。
漆の木に傷をつける前に、樹液に木の皮や汚れが混ざることを防ぐため、掃除をします。
漆の樹皮を削る独特の形状の鎌。漆掻き専用の道具は数多くあります。
最初に樹皮を削っておくことで、樹液にゴミが混ざることを防ぎます。
漆鉋で、樹皮を削った部分に溝を彫り込んでいきます。
白いラインが新しく彫った溝です。
溝から滲み出る樹液は、専用の掻きベラで集めます。
漆の樹液は、ゆっくりとですがしばらく出続けます。何度も何度も同じ溝から少しずつ、樹液を集めていきます。
漆の木は傷ついたときに、傷を防ぐための「硬化する」樹液を出します。樹液は動物の血液と似たような働きをしています。
丁寧に、一滴も無駄にならないようにと村上さんは樹液を集めます。
一本の木から採れる樹液は、牛乳瓶一本分(約200cc)程度。
その少なさには驚かされます。
一本の漆の木が育つまでには何十年もかかるからです。
村上さんはよく、「自分は作家ではない」という言い方をします。
漆の仕事は本当に非効率ですが、先人が大切につないできた知恵と技術が詰まっています。
それを後世に残し伝えていくことこそ、村上さんの「漆の仕事」だとおっしゃっています。
ラビーダでは村上さんに、家具や住宅に関わる大きなものから小さなものまで様々なものを、漆塗りで仕上げていただいています。
こういった仕事が、後世に「漆」という文化を伝えていく一助になれれば嬉しく思います。
長谷川
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