ラビーダで主に造作のキッチンや収納家具の製作をお願いしている早川家具の早川貴則さんにお話を伺いに行ってきました。
無垢材の加工を得意にしている早川さん。良材がどんどん減っていっている状況の中、いかに良い材料を見つけてくるか、また「接板(はぎいた)」のような材料をどううまく使っていくかを考えることがこれからの家具作りには大切になっていくと教えてくれました。
安価で加工のしやすいフラッシュ材や集成材が増えすぎてしまった結果、無垢材を知らない若い世代が増えてしまい、「新しい家具を最も必要としている世代」のニーズが「本物」ではなくなってしまいました。
そのような状況の中、「家具を製作する職人だからこそできる、お客様のためになる提案」は何かをずっと考えています。
かつての日本の住宅は「台所(炊事場)」と「茶の間」や「食堂」は別々の空間になるような間取りが一般的でした。住宅の間取りが欧米化していく中で起きた大きな変化は「リビング・ダイニング・キッチン(LDK)が一つの空間にある」ということです。
団欒の場であり、お客様をお通しする場所から、キッチンが見えるようになったことで「かっこいいキッチン」「見せるキッチン」の需要が高まっていきました。
このことがその後、「リビング・ダイニングと統一感のあるキッチンには、家具職人だからこそ可能な提案がある」という気付きにつながりました。
「住宅提案の肝は、LDK。その中心にあるのはダイニングテーブルであり、テーブルこそが家具屋の要です。そしてテーブルは暮らしの大黒柱なんです。そんなテーブルにぴったりのキッチンが作れれば」と早川さん。
ダイニングテーブルもキッチンも、素材によって印象は一変します。
良質な広葉樹を材料に作られた家具の素材感、存在感は他には得られない印象をもたらしてくれます。
しかし、キッチンは熱と水分が直接木材に影響を与えてしまう場所。
材料を知り尽くし、繊細に使い方を見極めて製作しないと、木材が変形し使いづらいキッチンになってしまいます。
早川さんは、材料の目利きと無垢材の扱いに長けることで、福島県では類を見ない職人へと技術を高めていきました。
もともとは店舗内装や什器を依頼されることが多かったという早川家具店さん。
意匠系の設計士の難しい注文に応える、一点ものの家具製作工房として地域になくてはならない工房でした。
数々の設計士さんとのお付き合いの中から、県外での仕事も多数請け負うようになり、東京の仕事をするようになると、そのレベルの高さに驚かされたそうです。
ますます自分の技術を向上させないといけないとの焦りから、難しい仕事をするために、関東近県での仕事を増やした時期もあったそうです。
しかし震災後、その技術を地元で活かしていこうと地元郡山のオーダー家具の仕事を意識的に増やしていきました。
そのような中でラビーダとともに開発する「無垢材で作る本物のキッチン」につながっていきます。
「与えられたコンセプトの中で、ベストを尽くすのが私たち、職人の仕事」と話す早川さん。
今後はVOC(大気汚染をもたらす揮発性有機化合物)が出ないような、健康に良い家具作り、無垢材を中心にした家具作りを目指していきます。
時代的にも需要はそちらの方向へ進んでいるように感じられる昨今。時代が追い風となり、早川さんのような家具のつくり手が注目されていくのではないでしょうか。
長谷川
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