ヒノキは、日本では建材として特に最高品質のものとされています。
木材の特長として、加工が容易な上に緻密で狂いがなく、強い芳香を長期にわたって発するため、歴史的に日本で好まれ使われてきました。正しく使われたヒノキの建築には1,000年を超える寿命を保つため、古くから寺社仏閣の建材として重宝されていました。
素戔嗚尊(スサノオノミコト)が「宮殿はヒノキで作るべし」と言ったと日本書紀でも伝えられているというエピソードは、建築関係者には有名な話です。
(正倉院:出典 wikipedia)
法隆寺や正倉院もヒノキで建てられており、千三百年経ってもなお、表面を削ると新しい木肌が現れ芳香を放つといわれています。それほど耐久性があることで、今でも土台用材の第一にはヒノキが挙げられるいわれとなっています。
(正倉院:出典 wikipedia)
正倉院は校木(あぜぎ)という断面三角形の材を20段重ねて壁体をつくる、校倉造(あぜくらづくり)という工法が用いられています。現存する奈良時代の倉庫としてはもっとも規模が大きく、また、奈良時代の「正倉」の実態を伝える唯一の遺構として、建築史的にもきわめて価値の高いものです。建立時期は8世紀中頃。ゆうに1300年近い年月を耐える木材が、ヒノキなのです。
(伊勢神宮:出典 wikipedia)
伊勢神宮では20年に一度、社を新しく建て替える式年遷宮と呼ばれる行事が行われ、定期的に大量のヒノキ材が必要となりました。1回の遷宮で使用されるヒノキは1万本以上になり、神宮林のヒノキでは不足しだします。古くは伊勢国(今の三重県、愛知県、岐阜県あたり)のヒノキを使用していたそうですが、次第に不足し、三河国(愛知県東部あたり)や美濃国(岐阜県南部あたり)からも調達するようになったそうです。18世紀には木曽山を御杣山(みそまやま)と正式に定め、ここから本格的にヒノキを調達するようになりました。
(明治神宮大鳥居:出典 wikipedia)
ヒノキは日本産のもの以外ではタイワンヒノキが有名です。タイワンヒノキは、日本産ヒノキと比べやや黄色がかり、香気が劣ると言われることもありますが、太い木に育ちやすい特徴があります。明治神宮の大鳥居にはこのタイワンヒノキの大木が台湾から輸入され、使われています。
ヒノキの材は日本中、そして世界を見渡してもトップを争う優良材です。材質にはムラがなく、年輪も際立たず、特有の芳香と光沢があり、しっとりと落ち着いた質感があり加工もしやすい。奈良時代以降の仏像は皆ヒノキで彫られてきたことも納得の材質です。
ヒノキを腐りにくくしている「カジノール」と呼ばれる芳香物質は、森林浴と同様の健康効果も実証されました。
日本文化を象徴する木として、ヒノキは今後ますます貴重な材となっていくことが予想されます。
良質なヒノキがまだ手に入る今だからこそ、多くの方に興味を持っていただき活用していただければ幸いです。
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