8月は中旬。もうすぐお盆だというのに台風が近づいているとのこと。
郡山市は長袖シャツでちょうどいい位の気温。肌寒いくらいです。
各地で台風被害が大きくならない事を祈りながら、私は本日も汗をかきかき作業中です。
さて、今回はFinn Juhlのcupboardをご紹介します。
Finn Juhl 言わずと知れたデンマークを代表とする建築家、家具デザイナーです。
有名な作品としてはCheiftain ChairやNo45などが特に知られています。
しかしFinn Juhlの魅力は椅子だけではないのです。
まずはデザインについて
Finn Juhlのデザインの特徴としては細かなディテールと美しい曲線が印象的です。
このカップボードもFinn Juhlらしさが溢れていますね。
脚部のフレームに引き出し本体が乗っているというデザイン。
脚部のラインの美しさもさることながら、本体の板厚や収まり、接合部のディテールもよく考えていますね。
引き出しのツマミはシェーカーの形からインスピレーションされたものだと思われます。
ツマミ一つで表情が全く変わってします。シンプルだからこそ当時制作にあたって色々な形を試されたんではないのでしょうかね。
次に素材について
このカップボードは3種類の材料を使っています。
チーク。
パイン。
メープル。
チーク材はラビーダでもよく使用している材料で油分が多く狂いにくいのが特徴です。このカップボードでは脚部フレームに使われています。
パイン材は世間一般に知られているパイン材ではなく、オレゴンパインという材料を使っています。通常パイン材は目の積み方も疎らで、どこ頭にかならず大きな節が入っています。しかし、この家具に通常のパイン材は使えません。なぜなら、必ず狂いがでて使用に支障が出るからです。
写真でも見て分かるように、この家具の作りはとても繊細です。わずか1mm程度の狂いが命取りになるのです。
オレゴンパインは強度が強く狂いもとても少ない材料です。その柾目部分を本体、引き出しの前板に使用されています。
そして、なんと実は本体はブックマッチは接がれていて、前板も木目が通っているんです。。。ここまで細かく木取りしているんですよ。すごいとしか言いようがないですね。
メープル材は固く狂いも少ない、木目の細かい材料です。
通常は椅子やテーブルなどの強度が必要な見える部分に使う事がほとんどですが、このカップボードには引き出しの側板と底板に使われています。見えない部分にメープル材を使っているですよ。今の家具製作ではまずやらない材料の使い方ですね。贅沢です。
そして最後に構造について
なんとカップボードには面白い仕掛けがあるんです。
まず3列ある一番上の引き出しを開けます。
次に下の段を開けます。
はい。開きました!
。。。?
ここまでだと普通の家具ですよね。
しかしそこはFinn Juhl。やる事が憎いんです。
さて解説です。写真を見ると上の段3つの引き出しにのみ鍵がついてますよね。なぜでしょうか。これだと一番上の引き出しにしか貴重なものを入れられないですよね。おかしな作りだと思いますせんか。貴重なものが小さいとは限らないですよね。
しかし、このカップボードはなんと列の一番上にある引き出しを開けないと下の引き出しが開かないのです!
本体内部にちょっとした仕掛けがあるんです。
今回は特別にその構造をお見せします。
本体内部にはこのようなものがついてます。
さて、説明はここまで。あとは皆さんで考えてみましょう!!
なぜ上を開けないと下が開かないのか。。。謎を解いてみてください!
そして内部を見ていくと底面にはNIELS ROTH ANDERSENの印がありました。
毎回ヴィンテージ家具をメンテナンスや修理をしているととても勉強になる事が多いんです。今回のような仕組みや曲線のディテールなど一つ一つには意味がきちんとありそのものが成り立っているのです。
日々精進していこうと思います。
saku
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