あっという間に一月ももう最後の週ですね。
今週末は天気もよく小春日和といった感じですかね。まだまだ冬の寒さは続きますが、少しずつ春の兆しが見えてくると気持ちも嬉しくなりますね。
さて今回は全3回と続いているの骨董箪笥Blogの最終回。塗装・仕上げ編になります。
前回でようやく木部の修復、調整が終了し塗装の工程にうつります。
今回修復にあたって塗装には漆を使いました。
修復前の箪笥にも漆を使っておりましたので今回も同じく漆で仕上げました。
しかし今回は同じ漆でも塗装方法の異なる拭き漆という仕上げにしました。
拭き漆は木材に漆を塗っては拭き、薄い漆の塗膜を何層にも重ねる行程を繰り返し行ない仕上げていく方法のことをいいます。通常漆というと漆器のような真っ黒や真っ赤で木目の見えないものをイメージしがちですが、この方法はため塗りといいます。
拭き漆はため塗りとちがい木目を鮮やかに見せる事ができます。なのでラビーダではaテーブルやaチェア、LテーブルやLチェアなどに拭き漆を施しています。
しかし漆もただ塗ればいいということではありません。
もちろん漆の塗り方も大切な部分ではありますが、一番重要なのが下地の調整なのです。
まずは下の写真をご覧下さい。
これは引き出しの前板(欅材)を削り直した状態です。表面の塗装を接がし削り直すと木材本来の状態が現れます。欅はオレンジ色でとても堅く木目の詰まった材料です。その堅さと色味の質感から日本の家具にはよく高級材として使われてきました。欅は漆ととても相性がよくその木目を引き立たせる意味合いもあります。
しかし今回の引き出しの前板は削ってみると白太(辺材)部分が多く入り込んでいることが分かりました。写真で言う板の上の白い部分です。白太は木材の樹皮周辺の部材の名称です。白太はその名の通り白っぽく少々もろい部分もあります。そして赤身(心材)に比べ色味も変わっていますので、着色をしない場合はそのコントラストがそのまま塗装の仕上げに影響していきます。なので通常の木製家具は赤身と白太を気にせずに接着するので色味がパッチワークのような感じになります。しかし、そのままだと見栄えも悪いので木材に着色をして全体の色味を均一にしてしまうのです。
今回の漆の塗りに関しても同様です。そのまま漆を塗ってしまうと白太部分がどうしても目立ってしまうので、全体にすこし色をつけてその白太部分が目立たないように下処理をしていきます。
同じく、上段の引違い戸の戸框も白太が入り込んでいたので下処理をしていきます。
因にこの引違い戸の戸心は栓という材料ですのでこちらの色味も欅と違和感が出ないように調整していきます 。
下処理ができたらようやく漆の塗り行程です。
拭き漆は三回塗り。当初は箪笥前面のみ漆で仕上げてありましたが今回は前面と側面、天板の部分も拭き漆で仕上げました。今の時期は気温が低く漆が乾燥するのにも時間がかかります。
そして漆が乾燥したら最終行程の金具取付です。
箪笥一竿でだいたいこの位の種類を使います。取付け位置を確認調整しながら一つ一つの金物を釘で留めていきます。全体の数になると結構な量になるので漆を傷つけないように慎重に行ないました。
そしてとうとう完成したものがこちらになります!
After
この骨董箪笥の修復はとても考えさせられる内容でした。
捨ててしまうのは簡単なのですが、想いのあるものはやはりその気持ちに応えたい。
今回全3回にわたってご説明したのも普段見えない作業部分や気持ちの部分もみて考えてほしかったからなんです。
修理前と修理後の様子だけをみて判断してしまうのはあまりにも寂しいものです。
修理や製作などには数多くの行程があり、それぞれの職人さんが試行錯誤しながら作業を進めていきます。
もちろん専門分野以外の事は分からなくて当然だと思います。だからこそ、分からない部分はそのままにしないでご相談下さい。普段分からない部分の一つ一つの意味が分かるとものの在り方や本質が見えてくると思います。
つなぐつなげる
N様ありがとうございました。
塗装(漆):村上修一様
修復:佐久間
修理期間:約3ヶ月
saku
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